アイドルタイムにパートのおばちゃんは言いました

  • 2019.05.21 Tuesday
  • 01:45
フリーランス、フリーランスと声高に言う界隈ができたのは、それなりにすごい変化だよねと思う今日このごろ。
名前も顔も思い出せないのですが、あの瞬間に背中を押してもらえたのは本当にありがたかった…と感謝している相手がいます。

専門学校に通いながら平塚市のリンガーハットでアルバイトをしていた19歳当時。
現代史的にはバブルが弾けた92年ですが、実感的にはまだまだ世の中はふわふわしていて、出版業界は快調でした。
僕はと言えば、次の3月には卒業なのに就職にはリアリティがなく、ちょっとしたきっかけで青春出版社のBIGtomorrow編集部に出入りできるようになり、そこでもらった仕事を1、2回やってみて、取材っておもしろいなとドキドキ。
でも、日常の大部分は専門学校に行き、同級生と雀荘で麻雀しながらカレーを食べて、地元に戻ってからクルマで深夜のリンガーハットのシフトに入る毎日でした。
そんなある日、久しぶりに週末の昼間のシフトに入って迎えたお客さんの途切れるアイドルタイム。
そこそこバイト歴も長くなっていた僕はレジでランチタイムの違算金チェックを手伝っていました。
メインの担当は時間帯責任者のパートの女性で、当時はおばちゃんだと思ってましたが、今振り返ればきっと30代半ばくらい。
完全にお客さんの流れが途切れ、「最近どうなの?」「学校楽しいの?」「家庭教師のバイトは辞めちゃったんでしょう?」的な会話をしながらレジの小銭を数えていたわけです。

話の流れで「雑誌の編集部に出入りして、初めて取材に行きました」と打ち明けると、「そういう学校行っているんでしょう。よかったね」と言われ、「でも、このまま就職しないのも…」「じつはこの前、店長に誘われて…」とぶつぶつ、もじもじ。
そしたら、おばちゃん「楽しいと思える仕事ができるチャンスなんて滅多にないんだから、やったらいいのに。応援するよ」とピシッと背中を押してくれたのです。

その言葉に嘘がない感じが伝わって、そうか、これはチャンスなんだと思った僕は次に編集部へ行ったとき、「続けて行きたいので、取材先も増やしていいですか?」と前向きな若手感を出し、しなだれかかるようにライター稼業に入っていったのでありました。

その後、別の編集部でも仕事をもらい、専門学校、取材、深夜のリンガーハットを並行しながら、ぐるぐる。だんだん学校にはあんまり顔を出さなくなって、でも、学費は出してもらっているんだから卒業はしときたいと思い、リンガーハットのバイトを辞めて、卒業を迎えたときはライター的なもの入り口に指を引っ掛けておりました。
本人が巡ってきたチャンスに気づかないとき、無責任な大人の一言が背中を押してくることもあるのです。
フリーライターになったと言っても、フリーター? と言われたころのお話ですが。
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