3年目でも30年目でも、ライターの主な悩みは変わりません

  • 2023.09.13 Wednesday
  • 10:53

週末、ぎりぎり20代から上は50代後半まで、Web、雑誌、企業もの、地方、エンタメ、ブックライティングなどなど、雑多な領域で仕事をするライターさんたちが20人くらい集まるランチ会という名の飲み会に参加してきました。

 

まずね、お店がよかった。

クラフトビールが飲み放題で、ビールに合うおつまみが何品か出てきて、4路線の各駅から徒歩数分という立地。

幹事さんの有能さがビシバシ伝わってきます。

おいしくて、場所がいいと会話がより弾みます。

これこそ、心理的安全性というヤツです。たぶん。

 

はじめましての方も何人もいて、そのうちの1人のライターさんが初めてブックライティングを担当された書籍をお持ちになっていて、ほうほうと制作話をうかがっていると、会話は自然とお金の話に。ぶっちゃけ、この感じだとブックライティング続けていくのは厳しいなーと。

 

聞けば、条件面であれこれと感じる部分はあり、でも、ひとまず1冊書いた実績をもとに、もう少し続けていっていただけるとうれしいなと思う一方、たしかにこの先、自分もブックライティングでやっていくのはしんどくなっていくのかもなーと思いをはせたり。いきなりビールの苦みが深くなる幕開けでした。

 

その後は久しぶりに会うエンタメ系ライターさんの充実した様子にエネルギーもらったり、おっさんライター同士、旧交をあたためたり、インボイスの話でうなったり、ライター同士だから伝わる話がいろいろできて楽しい時間に。

 

ありがとうございました。

きゅうりの輪切りと妻

  • 2018.11.17 Saturday
  • 00:30
息子氏1号2号が無事に眠り、夫婦でほっと一息ついていると、ソファでスマホをいじっていた妻が「きゅうりの輪切りをしていると思い出すことがある…」と打ち明け話をし始めた。
きゅうりの輪切り…。
なんじゃそらと思ったが、晩ごはんのおかずの一品がきゅうりの輪切りとカニカマの酢の物だった。

妻によると、高校の家庭科の時間、きゅうりの輪切りを制限時間内にすばやく切るというテストがあったのだと言う。
妻は当時から手早く食事を用意するスキルを身に付けていた。
打ち明け話の間、そうとは言わなかったが、内心、輪切りなら任せてくらいの自信を持っていたようだ。
ところが、思わぬライバルが立ちはだかる。
男子女子どちらかも好感を持たれている子ウサギ系のかわいい同級生女子だった。
普段はおっとりしている彼女が、予想以上の包丁さばきできゅうりの輪切りを量産していったのだ。
どちらかと言えば勝ち気で、主張もはっきりしていて目力の強いタイプの妻は自分の番が回ってくるのを待ちながら、私はもっと早くきれいに切れると闘志を燃やしていたのだと言う。

「今思うと、どうしてあんなに本気になったのかわからない」

女子高生であった妻はまな板の前に立つと一心不乱に包丁できゅうりを輪切りにしていった。
きっと今夜食べた酢の物のきゅうりのように美しい輪が次々と生み出されていたのだろう。
ところが、子ウサギ系同級生女子の番には聞こえていた「すごい」「はやい」「やる」といった賞賛の声はあがらず、妻は潮が引いていくような空気を感じていた。

「どうして? どうして? 私には賞賛の声がかからないの!」

試技を終え、同級生たちの冷めた視線を受け止めながら、妻は心の中でそう叫んだのだと言う。

かわいい女子のがんばりは賞賛され、勝ち気で自己主張のはっきりした女子の奮闘は冷めた目で封殺される。
妻がそんな世の理に気づいたのは、社会に出てからだったと。
きゅうりの輪切りをするたびに、高校生の自分を思い出すと。
そんなため息とともに打ち明け話は終わった。

明日以降の未来、僕は妻がきゅうりの酢の物を作ってくれる度、家庭科室で一心不乱にきゅうりの輪切りに挑む女子高生の姿を想像する。
同調圧力に弱いクラスメートたちが引いた顔をしていたとしても、教室の隅で毒づいてばかりいた僕は妻のストレートな苛立ちと、それを悟られまいと隠しながらもバレバレな姿に胸をときめかすことだろう。

Mさんと河原で、朝

  • 2016.04.22 Friday
  • 17:27
すぐに思い出すのは、最高に楽しいどっきりに引っかかった日のことだ。

「佐口、今日と明日、時間ある?」と編プロの先輩ライターのAさんから電話がかかってきた。
仕事を始めたばかりで、電話は滅多にならず、時間はどっさり余っていた。

「ありますよー」
「新宿で打ち合わせするから、◯時に来れる?」
「はーい」

合流し、向かった先は丸正だった。
食品売り場でカゴを持たされ、あれやこれやを買い込む。
なんかヘンだ。
でも、料理の撮影もやっている編プロだったから、スタジオへ行くのかな? と思ってた。
だけど、次に向かった先は中央線のホーム。
乗り込んだのは青梅特快、青梅行。
せいぜい行っても吉祥寺辺りで降りるんだろうと思っていたら、特快は吉祥寺止まらないのね。
三鷹を出たら、ぐんぐん都心から離れていって、薄暗くなった頃、青梅に到着。

「えーと、なんですか? これ?」
「いいの、いいの。お迎え来てるからー」

駅前に止まっていたのは、シルバーのハイエース。
ドアが開いて、ニカッと笑顔でカメラマンのMさんが現れた。

「おー、佐口。よく来たねー」
「はい」
「乗って乗って」

あ、やっぱ撮影? でも、山で? 暗いけどなどとドギマギしているうち、ハイエースは山道を進み、駐車場に。

「着いたよー」
「はい」
「降りて降りて」
「はい」
「荷物持っていくの手伝ってね」
「はい。ここで撮るんですか?」
「なに言っているのー? キャンプだよ」
「え?」
「聞いてない?」
「はい」

ぽかんとしてたら、横にいたAさんから「さあ、動く、動く」と荷物を渡され、砂利道を進むと、その先には河原とテントと焚き火。
そして、Mさんのパートナーである編プロの社長と見知った先輩たち、同世代の仲間たちが和気あいあい。

「佐口、ホントにきちゃったの」
「はい。あの、打ち合わせは?」
「だから、キャンプでしょ!」

社長がニッコリと笑ってて、もう、なんだよ、このニカッとニッコリ夫婦!!
と、あんぐりしたのもつかの間、カバンとノートくらいしか持っていない状態で人生初のキャンプ&テント泊を体験することに。
アウトドア度数ゼロの10代を送っていたので、何もかも新鮮で、Mさんの起こす焚き火を眺め、よくわからないけど次々と繰り出される料理(スパイスに漬け込んだ鳥肉が超絶うまかった)をいただき、ビールを飲むうち、超楽しくなっちゃって、終いには記憶もあやふやで、「打ち合わせしましょうよ」と絡んだりしながらテントに倒れこんだのだ、とか。

翌朝、寝袋から這い出して、テントを出ると、目の前は川で、うん、キャンプだ、夢じゃなかった。
なんてぼけーっとしてたら、すでに何やら火の周りでごそごそやっていたMさんが、「コーヒー飲むー?」と聞いてきて、コポコポ沸き出すいかにもアウトドアなケトルで、にが目のヤツを淹れてくれて、「どう? おいしい?」と聞くもんで、もう何回言ったかわからない「うまいです」を繰り返し、山って二日酔いにならないんだなーとぼんやり。

「どう、キャンプ?」
「楽しいですね」
「ね。今度は、ちゃんと予定教えるから、また来なよ」

そう言って再びニカッと笑ったMさん。
その後も何度かキャンプに参加したのだけれど、1回目の印象が強すぎて、2回目以降の記憶はごちゃ混ぜになっている。

薄暗くなった青梅駅前。
銀色のハイエース。
さらわれる?
誰が降りてくんの?
のあとの、ニカッ。
いい大人がいたずら大成功って顔で笑ってて、連れて行かれた先では社長がニッコリ笑ってて、夫婦ってものが想像もつかない若造でも、一緒にいるべくして出会ったふたりという気がした。

もう何年も前だけど、最後に会ったときもニカッと笑ってた。
なぜか、アジフライと唐揚げをごちそうになって。
いつも食べさせてもらってばっかだったな。

どうかニッコリ見送ってください。
どうかニカッと待っててください。
 

人にバカって言ったら、人からバカだと思われる

  • 2015.09.21 Monday
  • 22:26
熟年離婚って言葉、聞くことあるじゃないですか。
プレジデントオンラインとか、あのへんの記事を読んでいるとちらほら出てくるキーワードです。
たしかにあるだろうなーとぼんやりイメージしていたんですが、今日、実像が結ばれました。
と言っても、熟年離婚の証人になったとか、そういう話じゃないんですけどね。

原稿が終わらぬ……何がシルバーウィークだーとぼやいていたら、気を利かせた妻が息子氏と一緒に外泊中の本日。
1本仕上げてメールで送り、さあ、晩飯だ。
ビールも飲んじゃうか。だったら、あそこの新しくできたビールとジャーマンソーセージの店に行ってみよう。
探索、探索とワクワク向かったら、なんとお休み…。
このショックと空腹をどうしたものかと思いつつ、もう歩きたくないなーと。
その新店のそばにある、非常に安定した五目そばとザーサイのおいしい中華に入ったわけです。

生ビールときゅうりとザーサイで「ふー」と一息、Kindleでじいさん大活躍? となるらしいハードボイルド小説を読み始めたところ、隣席から「バカ」の連呼が聞こえてきましたよ。
発しているの60歳目前くらいのおじさんで、ちぐはぐな休日ファッション。
バカの連呼を受け止めているのは同世代の奥さんで、洒落たスカートにきりっとした白いシャツ。

話の前後から類推すると、どうやら仕事に関係する大事な要件を奥さんが伝えた、伝えないで一悶着しているらしく。
「これまでこんなこと何百回あった? バカが」
「おまえは伝えたつもりになっているんだよ、バカだから」
「聞いてたら、俺が何もしないわけないだろう、バカが」
「ホントに毎回、毎回、頭にくるな、バカ」
「おまえは反省がないから、進歩がないんだよ、バカだから」

とまあ、自分の夫婦事情に置き換えた場合、まったくありえない強気のバカ連呼に、ザーサイ&ビールのゴールデンコンビの味わいも色褪せ、今夜はダメな夜だ…と落ち込んでしまったわけですが、しかし。

奥さんは怒るわけでもなく、時々、「だけどね、伝えたと思うけど」と言ったりして、おじさんの「何日何曜日だよ?」という小学生的反駁を引き出したりしています。

たぶんなんですけど、奥さん、もうおじさんの言うことに一切の興味がないのではないかと思うのですよ。
だから、連呼されるバカもなにも右から左へ聞き流していられるのではないか、と。
で、目の前の人が何を着ていても、何を飲んでいてもよくて、ただただXデーを待っているのではないか、と。
そんな想像をしていて、あ、これが熟年離婚というものかと思ったわけですが…、まあ、余計なお世話ですね。
もしかしたら、この人はバカを連呼して日頃の澱を発散しているのだから、受け止めてあげましょう、という深き愛情かもしれませんし。

結論としては、人がバカバカ言われているのをそばで聞いているとビールがおいしくなくなって、ムカつき、おじさん退職した途端、一人きりになればいいのになどとひどいことを考えてしまうって話でした。
 

焼肉屋で合コン…徒歩圏にホテル街…まだ月曜日ですが…

  • 2015.05.19 Tuesday
  • 15:17
昨日は夜の渋谷で、にわか売れっ子気分を味わってきました。

これから仕事Aを一緒にやる旧知の編集さんにお誘い受け、いそいそと神泉駅から徒歩数分のフォーリンデブはっしーさんオススメの焼き肉屋さんへ。メンバーは、秋に向けて初めて仕事Bをご一緒しそうな(お付き合いは長い)編集さんと、新たな案件Cで依頼をくださったばかりの編集さんという3編集さん1ライターであります。
3人の編集さんは一時期みなさん同僚で、今は見事に別々の会社にお勤めで、それぞれにご活躍。
ライター的には、新規営業せずに新たな出版社さんとお付き合いが始まるという大いにありがたい状況です。
がんばってー、みんな。俺もがんばるけん!

で、まあ、炭水化物ダイエットをしているとか、し始めるとか、そのわりにビールは飲みたいとか、そもそも焼肉屋に集まっている時点で痩せる気はあるのかみたいなしょーもない話でゆるやかに始まった会合は、隣の席でかしましく進行するテラスハウス劣化版みたいな合コン(いい肉出す焼肉屋でやんなー。肉が焦げてて、気になる。ひときわ声の甲高かったあなた、前田敦子にはまったく似てない。よく似ている芸能人でその名前を出せるな。メンタル強すぎだ…というか、隣のテーブルの話、聞きすぎだ、俺)に会話を妨げられながら、昨今の出版事情などをもそもそ、と。

次第に声のボリュームが高めるのにみんな疲れて、肉に集中。
ハラミがとてもおいしゅうございました。
でも、少しばっかり話足りないので河岸を変え、今度は静かな店であーだこーだと情報交換。
仕事していれば悩みは尽きず、あれやこれやと話しているとやっぱり楽しいですね。
しかも、ちょっと先に全員とお仕事する予定なので、こっち先にやってよ、結局、原稿料のいい方、選ぶの? みたいなくすぐりも入って、きっとニヤニヤしていたと思います、自分。
そして、これは他の編集さんと話していても感じますが、皆さん、これまでとは違った枠組みでの出版の仕方をぼんやり模索されているようです。
もしかすると、そう遠からず実用書、ビジネス書まわりの流通、販売には目に見えた変化が現れてくるのかもしれません。

archives

recent comment

recent trackback

profile

ブログペット

search this site.

calendar

S M T W T F S
     12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31      
<< March 2024 >>

mobile

qrcode

recommend

問題です。2000円の弁当を3秒で「安い!」と思わせなさい
問題です。2000円の弁当を3秒で「安い!」と思わせなさい (JUGEMレビュー »)
山田 真哉
「DIME」連載時からお手伝いしていた公認会計士、山田真哉さんの新刊。会計はもちろん、数字の使いこなし方、消費税対策、老後も安心な資産設計など、盛りだくさんの内容です。

recommend

ぼくのオカンがうつになった。
ぼくのオカンがうつになった。 (JUGEMレビュー »)
佐口 賢作
うつ病によって、人が変わってしまったように思える親や家族とどう付き合えばいいのか?
動揺する気持ちを抱えているすべての人に、少しでも役立てばいいなと思い、この本を作りました。うつ病と向き合い、しんどさを感じている人に「俺だけじゃ、私だけじゃないんだ」とホッと一息ついてもらえたら、なによりです。

recommend

派遣のリアル (宝島SUGOI文庫)
派遣のリアル (宝島SUGOI文庫) (JUGEMレビュー »)
門倉 貴史
体験レポートなどを書いた「派遣のリアル」が宝島新書から宝島文庫に文庫化。表紙がコミック風になりました。昨日新宿西口のブックファーストに行ったら、かなり好位置にどーんと面出し展開されていて、びっくり。

recommend

病気だョ!全員集合―月乃光司対談集
病気だョ!全員集合―月乃光司対談集 (JUGEMレビュー »)
月乃 光司
編集N氏が暗躍してついに完成した「こわれ者の祭典」の月乃光司さんの初対談集です。大槻ケンジさん、手塚眞さんとの対談の取材・構成を担当しました。ニヤリと笑えて少しばっかり元気が出る良き本なので、どうかひとつよろしくお願いします。

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM