Mさんと河原で、朝

  • 2016.04.22 Friday
  • 17:27
すぐに思い出すのは、最高に楽しいどっきりに引っかかった日のことだ。

「佐口、今日と明日、時間ある?」と編プロの先輩ライターのAさんから電話がかかってきた。
仕事を始めたばかりで、電話は滅多にならず、時間はどっさり余っていた。

「ありますよー」
「新宿で打ち合わせするから、◯時に来れる?」
「はーい」

合流し、向かった先は丸正だった。
食品売り場でカゴを持たされ、あれやこれやを買い込む。
なんかヘンだ。
でも、料理の撮影もやっている編プロだったから、スタジオへ行くのかな? と思ってた。
だけど、次に向かった先は中央線のホーム。
乗り込んだのは青梅特快、青梅行。
せいぜい行っても吉祥寺辺りで降りるんだろうと思っていたら、特快は吉祥寺止まらないのね。
三鷹を出たら、ぐんぐん都心から離れていって、薄暗くなった頃、青梅に到着。

「えーと、なんですか? これ?」
「いいの、いいの。お迎え来てるからー」

駅前に止まっていたのは、シルバーのハイエース。
ドアが開いて、ニカッと笑顔でカメラマンのMさんが現れた。

「おー、佐口。よく来たねー」
「はい」
「乗って乗って」

あ、やっぱ撮影? でも、山で? 暗いけどなどとドギマギしているうち、ハイエースは山道を進み、駐車場に。

「着いたよー」
「はい」
「降りて降りて」
「はい」
「荷物持っていくの手伝ってね」
「はい。ここで撮るんですか?」
「なに言っているのー? キャンプだよ」
「え?」
「聞いてない?」
「はい」

ぽかんとしてたら、横にいたAさんから「さあ、動く、動く」と荷物を渡され、砂利道を進むと、その先には河原とテントと焚き火。
そして、Mさんのパートナーである編プロの社長と見知った先輩たち、同世代の仲間たちが和気あいあい。

「佐口、ホントにきちゃったの」
「はい。あの、打ち合わせは?」
「だから、キャンプでしょ!」

社長がニッコリと笑ってて、もう、なんだよ、このニカッとニッコリ夫婦!!
と、あんぐりしたのもつかの間、カバンとノートくらいしか持っていない状態で人生初のキャンプ&テント泊を体験することに。
アウトドア度数ゼロの10代を送っていたので、何もかも新鮮で、Mさんの起こす焚き火を眺め、よくわからないけど次々と繰り出される料理(スパイスに漬け込んだ鳥肉が超絶うまかった)をいただき、ビールを飲むうち、超楽しくなっちゃって、終いには記憶もあやふやで、「打ち合わせしましょうよ」と絡んだりしながらテントに倒れこんだのだ、とか。

翌朝、寝袋から這い出して、テントを出ると、目の前は川で、うん、キャンプだ、夢じゃなかった。
なんてぼけーっとしてたら、すでに何やら火の周りでごそごそやっていたMさんが、「コーヒー飲むー?」と聞いてきて、コポコポ沸き出すいかにもアウトドアなケトルで、にが目のヤツを淹れてくれて、「どう? おいしい?」と聞くもんで、もう何回言ったかわからない「うまいです」を繰り返し、山って二日酔いにならないんだなーとぼんやり。

「どう、キャンプ?」
「楽しいですね」
「ね。今度は、ちゃんと予定教えるから、また来なよ」

そう言って再びニカッと笑ったMさん。
その後も何度かキャンプに参加したのだけれど、1回目の印象が強すぎて、2回目以降の記憶はごちゃ混ぜになっている。

薄暗くなった青梅駅前。
銀色のハイエース。
さらわれる?
誰が降りてくんの?
のあとの、ニカッ。
いい大人がいたずら大成功って顔で笑ってて、連れて行かれた先では社長がニッコリ笑ってて、夫婦ってものが想像もつかない若造でも、一緒にいるべくして出会ったふたりという気がした。

もう何年も前だけど、最後に会ったときもニカッと笑ってた。
なぜか、アジフライと唐揚げをごちそうになって。
いつも食べさせてもらってばっかだったな。

どうかニッコリ見送ってください。
どうかニカッと待っててください。
 

人にバカって言ったら、人からバカだと思われる

  • 2015.09.21 Monday
  • 22:26
熟年離婚って言葉、聞くことあるじゃないですか。
プレジデントオンラインとか、あのへんの記事を読んでいるとちらほら出てくるキーワードです。
たしかにあるだろうなーとぼんやりイメージしていたんですが、今日、実像が結ばれました。
と言っても、熟年離婚の証人になったとか、そういう話じゃないんですけどね。

原稿が終わらぬ……何がシルバーウィークだーとぼやいていたら、気を利かせた妻が息子氏と一緒に外泊中の本日。
1本仕上げてメールで送り、さあ、晩飯だ。
ビールも飲んじゃうか。だったら、あそこの新しくできたビールとジャーマンソーセージの店に行ってみよう。
探索、探索とワクワク向かったら、なんとお休み…。
このショックと空腹をどうしたものかと思いつつ、もう歩きたくないなーと。
その新店のそばにある、非常に安定した五目そばとザーサイのおいしい中華に入ったわけです。

生ビールときゅうりとザーサイで「ふー」と一息、Kindleでじいさん大活躍? となるらしいハードボイルド小説を読み始めたところ、隣席から「バカ」の連呼が聞こえてきましたよ。
発しているの60歳目前くらいのおじさんで、ちぐはぐな休日ファッション。
バカの連呼を受け止めているのは同世代の奥さんで、洒落たスカートにきりっとした白いシャツ。

話の前後から類推すると、どうやら仕事に関係する大事な要件を奥さんが伝えた、伝えないで一悶着しているらしく。
「これまでこんなこと何百回あった? バカが」
「おまえは伝えたつもりになっているんだよ、バカだから」
「聞いてたら、俺が何もしないわけないだろう、バカが」
「ホントに毎回、毎回、頭にくるな、バカ」
「おまえは反省がないから、進歩がないんだよ、バカだから」

とまあ、自分の夫婦事情に置き換えた場合、まったくありえない強気のバカ連呼に、ザーサイ&ビールのゴールデンコンビの味わいも色褪せ、今夜はダメな夜だ…と落ち込んでしまったわけですが、しかし。

奥さんは怒るわけでもなく、時々、「だけどね、伝えたと思うけど」と言ったりして、おじさんの「何日何曜日だよ?」という小学生的反駁を引き出したりしています。

たぶんなんですけど、奥さん、もうおじさんの言うことに一切の興味がないのではないかと思うのですよ。
だから、連呼されるバカもなにも右から左へ聞き流していられるのではないか、と。
で、目の前の人が何を着ていても、何を飲んでいてもよくて、ただただXデーを待っているのではないか、と。
そんな想像をしていて、あ、これが熟年離婚というものかと思ったわけですが…、まあ、余計なお世話ですね。
もしかしたら、この人はバカを連呼して日頃の澱を発散しているのだから、受け止めてあげましょう、という深き愛情かもしれませんし。

結論としては、人がバカバカ言われているのをそばで聞いているとビールがおいしくなくなって、ムカつき、おじさん退職した途端、一人きりになればいいのになどとひどいことを考えてしまうって話でした。
 

焼肉屋で合コン…徒歩圏にホテル街…まだ月曜日ですが…

  • 2015.05.19 Tuesday
  • 15:17
昨日は夜の渋谷で、にわか売れっ子気分を味わってきました。

これから仕事Aを一緒にやる旧知の編集さんにお誘い受け、いそいそと神泉駅から徒歩数分のフォーリンデブはっしーさんオススメの焼き肉屋さんへ。メンバーは、秋に向けて初めて仕事Bをご一緒しそうな(お付き合いは長い)編集さんと、新たな案件Cで依頼をくださったばかりの編集さんという3編集さん1ライターであります。
3人の編集さんは一時期みなさん同僚で、今は見事に別々の会社にお勤めで、それぞれにご活躍。
ライター的には、新規営業せずに新たな出版社さんとお付き合いが始まるという大いにありがたい状況です。
がんばってー、みんな。俺もがんばるけん!

で、まあ、炭水化物ダイエットをしているとか、し始めるとか、そのわりにビールは飲みたいとか、そもそも焼肉屋に集まっている時点で痩せる気はあるのかみたいなしょーもない話でゆるやかに始まった会合は、隣の席でかしましく進行するテラスハウス劣化版みたいな合コン(いい肉出す焼肉屋でやんなー。肉が焦げてて、気になる。ひときわ声の甲高かったあなた、前田敦子にはまったく似てない。よく似ている芸能人でその名前を出せるな。メンタル強すぎだ…というか、隣のテーブルの話、聞きすぎだ、俺)に会話を妨げられながら、昨今の出版事情などをもそもそ、と。

次第に声のボリュームが高めるのにみんな疲れて、肉に集中。
ハラミがとてもおいしゅうございました。
でも、少しばっかり話足りないので河岸を変え、今度は静かな店であーだこーだと情報交換。
仕事していれば悩みは尽きず、あれやこれやと話しているとやっぱり楽しいですね。
しかも、ちょっと先に全員とお仕事する予定なので、こっち先にやってよ、結局、原稿料のいい方、選ぶの? みたいなくすぐりも入って、きっとニヤニヤしていたと思います、自分。
そして、これは他の編集さんと話していても感じますが、皆さん、これまでとは違った枠組みでの出版の仕方をぼんやり模索されているようです。
もしかすると、そう遠からず実用書、ビジネス書まわりの流通、販売には目に見えた変化が現れてくるのかもしれません。

うまけりゃいいかってことにしておきましょう

  • 2015.01.09 Friday
  • 12:57
うわー、髪の毛入っているよー。いやー、縮れてるのはつらいなぁ…。
と、そんな経験は何度となくあるわけですが、最終的にはまあいいか、おいしいしって食べちゃうタイプです。
ここのところ、記者会見を受ける形で混入ニュースが連打されているわけですけども、ちょうど一昨日から読み始めた石井光太さんの本「浮浪児1945 戦争が生んだ子供たち」にこんなシーンが出てきました。

以下、引用です(一部、略している部分があります)。

「浮浪児たちは進駐軍人や基地に少しずつ慣れてくると、片言の英語を覚えて自由に基地に出入りするようになった。彼らが目をつけたのが、食堂の片隅にある巨大なゴミ箱に捨てられた残飯だった。牛肉、鶏肉、ケーキ、パイナップルなど兵士たちの食べ残しが日々大量に廃棄されており、それは飢えている日本人にとってご馳走の山だった。
 そこで浮浪児たちは自分で大きな袋を持ち込み、残飯を分けてもらって町の闇市へ持っていって売った。闇市では、基地から流れてきた残飯を巨大な鍋で煮込んで売る『残飯シチュー』が人気を博しており、その具材となったのである。」

「早人が通っていた店は、中年男性が一人で切り盛りしていた。いつも汗にまみれており、直径一メートルほどの巨大な鍋で残飯をぐつぐつと煮込んでいる。早人が基地で手に入れた残飯を持っていくと、キロ単位で買い取り、中身を確認することなく全部鍋に打ち込んだそうだ。早人はこう続ける。
『鍋に何が入っているかは想像もつかいないし、とんでもないものが交じっていることもある。ゴキブリや蛆や煙草やペンなんかは当たり前、ある残飯シチュー屋では鍋の底をすくってみたら猫の死骸が出てきたなんて噂があったほどだ。
 中略
 とはいえ、残飯シチューの味自体は、それをもってもあまりあるほどのうまさだった。あんなにおいしいものを食べたのは後にも先にもあの時だけだ。なんせ、戦後の焼け野原で雑草やらネズミやらを食ってどうにか生きてきた人間が、いきなり肉や野菜がふんだんに入った煮込みを食べるんだぞ。口に入れた途端に感動して涙があふれてくるほどだった。』」

引用、終わり。

引用部分は1945年から1946年の上野や新宿の闇市でのお話で、他にも鍋の中にコンドームが入っていたとか、それでも残飯シチューの店には常に行列ができていたとか、パンチのある証言が続きます。
 
だからまあ、少々の混入なんてって言う気はさらさらないんですけど、今年は戦後70年。
長いようで短い時間の間に、街も商品も人もこんなにクリーンになるもんなんですね。改めて、自分が技術革新が加速した時代に生きているんだなと。その結果、今、外食先で食べているこの料理の材料はどこからきたんだろう? どんな処理が行われているんだろうってこと、ほとんど考えなくなっています。
ぱっと見は見えない混入物のが……って考えると、こわいこわい。
ちなみに、闇市を知る方々もどんどんご高齢になるわけで、どちらの町にも頻繁に足を運ぶことのある僕としては、この本、興味深くてたまらない内容となっております。手放しにおもしろい! と言っていいか一寸悩むんですけど、本当におもしろいんですよ。

高校卒業、22年ですかー

  • 2014.09.15 Monday
  • 19:18
先日は小学校の途中から高校の途中までを過ごした平塚に行ってきました。
湘南ベルマーレの取材以来なんで、2、3年ぶり。
駅前はなんだかんだで懐かしい気持ちになりますね。うん。

キョロキョロしながらホテルの無料送迎バスに乗り込むと、さっそくぼんやりとながらも見たことのある顔の女性が乗り合わせておりました。
うーん、誰だったかなー、でも、このバスに乗っている人がみんな同じ会場に向かっているとも限らないしなー。
とかなんとか思っているうちにバスはホテルに到着。
エレベーターに乗り込むと、さっきの女性が「同窓会ですか?」と声をかけてくれました。
「そうです。そうです。なんか緊張しますね」
「そうですね。何組だったんですか?」
「4組です」
「えーー、私も4組でしたよ」

しばし、じっくり顔を見合う時間があり、双方に浮かぶ「?」。
「いやー、わっかんないっすね。ごめんなさい」
ドアが開き、会場階に。
「はい。あとで改めて」

というわけで、昨夜は高校卒業以来、22年ぶりの同窓会でした。
何人かの今も付き合いのある同級生とここのところFacebook越しながらも近況を伝え合っている同級生。
そこまではまあ、いいでしょう。でも、ほとんどは卒業以来、初めて会う顔ばかり。
200人弱は集まっていたのかな。

あー、かっこよかったNくんは40になってもさわやかなだなー。でも、ちょっとちゃらいなぁ。
あっちの丸くなった人は誰だろうか? えーーー、同じクラスだったWくんかー。細身の長身だったのに。
お、あそこにいるのは小中高となにかと僕を小突いてくれたOくんじゃないか。近づかないようにしておこう。
などなど。
いかにも同窓会らしい感想を抱きつつ、会場をぐるり。
ちなみに、エレベーターでご一緒だった方は昔の写真を何枚か持ってきていて、見せてもらうとたしかに同じクラス。
お互いの18歳の顔を確認し、モヤっとな「?」を晴らすことができました。
でもまあ、当時、交流があったわけでもなく、特に会話は盛り上がらないという(笑)。
その後もこの微妙な感じを味わいながら過ぎていると、先生方のご挨拶などもあって、「君たちを教えていたとき、ちょうど41歳でした」ってな話にどよめきも起き、夜は更けていったのであります。

それにしても高校時代、どんだけ隅っこ隅っこで過ごしていたかという。
放送室の昼休みと放課後くらいなもんですよ、明るい思い出。
あとは終始もやっとしてました。
今思えば、つまんないことで線引きして、篭っていたわけで。
もったいないけど、戻りもしないし、こういうものなのでしょう。
帰りの電車は妙にさみしい気持ちなりました。

あと、高校時代、遠くから眺めるばっかりだったKさんがきてなかった!
どんなふうに年齢を重ねているか、見たかったなぁー。
(ドキドキするから、たぶん話せない(笑))

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