初めてブックライティングして、身に沁みたこと

  • 2019.05.28 Tuesday
  • 19:01
23歳か、24歳か、そのあたりの頃、月に何度も高井戸駅近くのステーキハウスに通っていたことがありました。
その時点で数冊の本を出していた著者の人に「ゴーストしてもらいたい」と依頼され、打ち合わせ兼聞き取り取材に行っていたのです。
とある雑誌の取材で知り合ったその人は、アメリカでのちょっとした冒険の経験があり、サラリーマン経験もあり、禅にも詳しく、不思議な魅力のある方でした。

・インタビューしてもらった記事がよくまとまっていた。
・1冊まるごと聞き書きしてくれたら印税を折半したい。前著は3万部だった。
・今、2つの版元と交渉しているので、うまくいけば2冊頼みたい。

そんな誘い文句に、僕はこう思ったわけです。

・褒められてうれしい、頼られてうれしい。
・1冊まるごと書く経験をしてみたい。
・印税折半だと過去にないまとまった収入になる!

テーマは壮大でした。

・日本のサラリーマンはこのままでは先がない。
・世界情勢の変化から終身雇用制度は確実に崩壊する。
・大志を持って独り立ちできるスーパーサラリーマンになりなさい。

実際に聞き取り取材をしてみると、著者さんはモチベーターであってもノウハウはあまりないタイプでした。
雑誌の編集部でベテラン編集さんたちに「ノウハウを聞け」「読者が活かせる方法を引き出せ」「実体験を伴うエピソードのない煽りはいらない」と叩き込まれていた僕は、「これで大丈夫かな?」と思いながらも、「企画案はこれで通っているから」という著者さんの言葉に従い、原稿をまとめていきました。
それまで書いた最長の原稿は単行本の一部分を担当した30ページほど。
当然ながら原稿作成には時間がかかりました。
4ヶ月ほどかけ、250ページほどの原稿を仕上げ、フロッピーディスクを著者さんに提出。そこから1ヶ月近く音沙汰なく、ある日、また高井戸駅近くのステーキハウスに呼び出されました。
そこで聞かされたのは、次のような話。

・版元の編集者から「なぜ、この内容をあなたが発信するのかが弱い」と指摘された。
・企画の方向性を大きく変えないといけないかもしれない。
・粘り強く交渉するから、しばらく待ってもらいたい。

編集さんとの打ち合わせに同席したいとリクエストしたんですが、著者さんからやめて欲しい、と。たぶん、ライターを使っているのを知られたくなかったのでしょう。そこで、次に打ち合わせするときは修正の方向性を知りたいので録音してきて欲しいと頼みました。

すると、また3週間後、次のようなことが判明。

・編集サイドしては、企画案を受け取り、構成を詰めようと考えている段階で原稿が上がってきて戸惑っているということ。
・内容が大上段で、評論家的(説得力に欠けるのではないか)。
・修正というよりも全面的な企画の見直しを考えている。

ガガーン! です。
俺の半年(聞き取り2ヶ月、原稿作成4ヶ月)は?
その辺、まるごと顔に出ていたのでしょう。
著者さんは、別の出版社に原稿を持ち込み、交渉すると言い、いつもよりいいステーキを奢ってくれました。
どんな気分でもうまい肉はうまいんだなという発見がありました。

結局、その後、著者さんからの連絡は途絶えるようになり、ゴーストの話もウヤムヤに。
僕は僕で、書籍こえぇ。ゴーストこえぇ。
取らぬ狸の皮算用で計算した印税が恨めしい。
雑誌だ、雑誌! と書籍への欲を封印。
そして、版元さん、編集さん経由の仕事をしなくちゃいけない。
発注の状況をしっかり確認しなくちゃいけないと強く胸に刻んだのです。
 
ちなみに、それから1年半ほどしたある日、新宿の紀伊國屋書店で資料本を探していると、その著者さんの新刊が発売になっていました。ライターでもやっていなければ知らない小さな版元さんです。
おいおい、俺の送った原稿どうなったのよ? と思いながら、ページを開くとポカーン。
そこにはフロッピーディスクに収めて渡したあの原稿が印刷され、製本されていたのです。
一字一句照らし合わせたわけではありませんが、ほぼそのまま。連絡は一切なし。

契約書を交わしたわけでも、今のようにメールのやりとりが残っているわけでもありませんから、怒りの持っていきようもありません。
商業出版なのか、自費出版なのかわかりませんが、まあ、やってくれますわー。
大人って怖いわー。
ただでは起き上がらないバイタリティって大事なんだなー。
そんなふうに思いつつ、ショックを受け流すことはできず、その日は資料探しをする気も失せ、地下のジンジンでたらことしめじのパスタを食べて家に帰りました。
最低の気分でしたが、パスタはいつもと変わらずおいしかったです。
うまい話には気をつけましょう。

アイドルタイムにパートのおばちゃんは言いました

  • 2019.05.21 Tuesday
  • 01:45
フリーランス、フリーランスと声高に言う界隈ができたのは、それなりにすごい変化だよねと思う今日このごろ。
名前も顔も思い出せないのですが、あの瞬間に背中を押してもらえたのは本当にありがたかった…と感謝している相手がいます。

専門学校に通いながら平塚市のリンガーハットでアルバイトをしていた19歳当時。
現代史的にはバブルが弾けた92年ですが、実感的にはまだまだ世の中はふわふわしていて、出版業界は快調でした。
僕はと言えば、次の3月には卒業なのに就職にはリアリティがなく、ちょっとしたきっかけで青春出版社のBIGtomorrow編集部に出入りできるようになり、そこでもらった仕事を1、2回やってみて、取材っておもしろいなとドキドキ。
でも、日常の大部分は専門学校に行き、同級生と雀荘で麻雀しながらカレーを食べて、地元に戻ってからクルマで深夜のリンガーハットのシフトに入る毎日でした。
そんなある日、久しぶりに週末の昼間のシフトに入って迎えたお客さんの途切れるアイドルタイム。
そこそこバイト歴も長くなっていた僕はレジでランチタイムの違算金チェックを手伝っていました。
メインの担当は時間帯責任者のパートの女性で、当時はおばちゃんだと思ってましたが、今振り返ればきっと30代半ばくらい。
完全にお客さんの流れが途切れ、「最近どうなの?」「学校楽しいの?」「家庭教師のバイトは辞めちゃったんでしょう?」的な会話をしながらレジの小銭を数えていたわけです。

話の流れで「雑誌の編集部に出入りして、初めて取材に行きました」と打ち明けると、「そういう学校行っているんでしょう。よかったね」と言われ、「でも、このまま就職しないのも…」「じつはこの前、店長に誘われて…」とぶつぶつ、もじもじ。
そしたら、おばちゃん「楽しいと思える仕事ができるチャンスなんて滅多にないんだから、やったらいいのに。応援するよ」とピシッと背中を押してくれたのです。

その言葉に嘘がない感じが伝わって、そうか、これはチャンスなんだと思った僕は次に編集部へ行ったとき、「続けて行きたいので、取材先も増やしていいですか?」と前向きな若手感を出し、しなだれかかるようにライター稼業に入っていったのでありました。

その後、別の編集部でも仕事をもらい、専門学校、取材、深夜のリンガーハットを並行しながら、ぐるぐる。だんだん学校にはあんまり顔を出さなくなって、でも、学費は出してもらっているんだから卒業はしときたいと思い、リンガーハットのバイトを辞めて、卒業を迎えたときはライター的なもの入り口に指を引っ掛けておりました。
本人が巡ってきたチャンスに気づかないとき、無責任な大人の一言が背中を押してくることもあるのです。
フリーライターになったと言っても、フリーター? と言われたころのお話ですが。

丁寧な1年になったらいいな、と

  • 2019.01.04 Friday
  • 09:53
あけましておめでとうございます。
昨年も大変お世話になりました。
おかげさまで、ライター稼業も27年目に突入します。

5歳と0歳の父ちゃん稼業、おかんの介護的な諸問題への対応など、年々仕事だけ、自分だけに使える時間は減りながらも、ありがたいことに注文は微増しており、ラフティング的なイメージで川の流れに乗っていきたいと願っております。

だからこそ、今年のテーマは「1つ1つ丁寧に」だなと。
ギュッとまとめてさばく能力は40代に入ってからこっち高まった(面の皮が厚くなっただけ?)気がしているので、ギュッとまとめてさばく間に「ぽんぽん」と形を整える一手間を大事にしていきたいと思います。
とはいえ、きちきちに思いつめるとしんどいので、心がける方向で。

今年もよろしくお引き立てのほど、お願いいたします。

平成って3月末まで続くんですね…。

脳内鼎談で行く年のふりかえり

  • 2018.12.27 Thursday
  • 18:03
◆今年はどんな1年でしたか? 昨日で年内の原稿も終わったということで、本日は脳内のお三方に来てもらいました。

ライター(ラ)「こんにちは。平成最後の年は、本当によく書いたね、うん。よく書いた」
総務(総)「よろしくお願いします。とにかく調整が大変でした」
父ちゃん(父)「どもども。毎日眠かったね」
総「夏に息子氏2号が誕生し、そこからはてんやわんやで気づけば年末でしたよ」
ラ「妻、育休に入るし、稼がねばーと思っていたところに、ぽんぽんっと依頼が重なって。どれも良さそうな案件で受けまくり、書いても書いても終わらないとボヤく展開に」
総「2ヶ月半の間に3冊の締め日が重なったときはどうなることかと思いましたよ。寝ても夢に見るという……。結局、締め切り延ばしてもらいましたよね。あれ、良くないですよ」
ラ「わかっているけどさ。体は1つ」
総「最近はAmazonで発売の2ヶ月前から予約が始まるの普通ですから」
ラ「あれ、ほんとドキドキするよね。まだ原稿にし終わってないけど……って胃腸にくる」
総「もっとヤキモキしているのは編集さんです」
ラ「だよねー」
父「とはいえ、家計は助かった。おかんの入院費もあったしね」
総「この度は梅雨から年末までですからね。約半年。長かったですね」
父「ね。孫2号が誕生も安定の何の手伝いもしてくれない状態…」
ラ「まあまあ。そのへん50代から一緒だから」
父「しかし、こっから介護的諸問題が本格化かと思うと…正直、もう病院からの急な電話には飽きましたー。どうしたって息子氏1号2号優先になりますわー」
総「それはね、じっくり考えましょう」
ラ「体は1つだからね」

◆インタビューで印象に残っているのは?

ラ「正直、1月にした取材のこととか、忘却の彼方…」
父「週プレの鈴木おさむさんの対談連載『この人だって父である』で、原田龍二さんに取材したでしょう」
ラ「そうだ!」
父「3つ上とは思えない完璧なスタイルでびっくりしましたー」
ラ「たしかに。かっこよかった!」
総「その後の竹本孝之さんもステキでしたよ」
ラ「そうだった!」
父「こちらも8つ年上とは信じられない色っぽさでしたよ」
ラ「魅せるプロと比べちゃいけないけど、一般のおっちゃんも体はある程度動かさないといけないよね」
総「割れてなくともぶよんとはしていないお腹を作りたいものですなぁ(遠い目)」
ラ「あとね、夏前に映画『コーヒーが冷めないうちに』のムックでインタビューさせてもらった健太郎さん」
父「取材の数日後、芸名を本名の伊藤健太郎とした健太郎さん」
ラ「あの子はね、売れるね。2020年には大スター」
総「どこから目線ですか。それ」
ラ「だってね、取材現場にいた人、全員5分で健太郎ファンになってたもん」
総「たしかに、ですね」
ラ「爽やか、素直、色っぽい、賢い。そのうえ、丁寧で礼儀正しいんだよ。インタビューアをやっていて、つくづく『神は二物を与えない』って教え、あれは例外多すぎ」
総「後半、僻みにしか聞こえなくなってきましたよ」
父「人間が小さいな。我ながら」
ラ「小さくていいんだよ。通俗だから、響くこともあるさー」

(続く)

 

その境地はどの境地

  • 2018.11.10 Saturday
  • 12:49

見城徹さんの本を読んでいたら、こんなくだりがありました。

「汗は自分できましょう。手柄は人にあげましょう」
竹下登さんの言葉だ。
そこに「そしてそれを忘れましょう」と付け加えた経営者がいることに衝撃を受けた。
「自分で汗をかき、それで得た結果を、自分のものにせず人に渡す」
ここまではなんとかできても、それを恩に着せず、きれいに忘れるのはなかなかなできることではない、と。

あれ俺詐欺の対極ですね。
あれ俺詐欺はしたくないけど、汗をかき、手柄を立てたら、人に自慢したいよなぁ。

 

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